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日本人が行けるミャンマーの
ヴィパサナー瞑想道場と仏教大学

上座仏教との出会い外国人向けの有名な道場 マハシ瞑想道場滞在の仕方と必需品仏教大学

私がはじめてミャンマーを訪れたのはいまから8年前になる。バンコクの近代的な町並みから、なんともいきなり日本の50年前へとタイムスリップしたような感じがしたものだ。「これが、本当に国際空港なの」ミャンマー到着の第一声はこんな呟きから始まった。飛行場から町へ向かう道路には、信号一つない。夜到着したが、町中が真っ暗。ヤンゴン一の繁華街、チャイニーズタウンでさえ薄暗い。それもそのはず、建ち並ぶ屋台にはカンテラか懐中電灯が店先にぽつんと吊り下がっているだけ。町中が停電とは、私には考えられないことだった。

マハシの比丘たち

スーパーマーケットもデパートもない。あるのはひときは大きく金色に光り輝くシュダゴンパゴダと、比丘(上座仏教の僧侶)の朝の托鉢の姿だけだった。

いまでは一応、飛行場も整備され、車も渋滞するし、信号もある。スーパーマーケットがたくさん増え、デパートができ、ホテルやしゃれたレストランさえできている。町中が変化した中で、変わってないのは仏教の姿だけかも知れない。

私の上座仏教との出遭いは、日本でスリランカの長老とミャンマーの長老に知り合う縁に恵まれ、大乗仏教と上座仏教の交流勉強会を開いたのがはじまりだった。2年間、勉強会を続ける内、大乗仏教と初期仏教があまりにも違うことに、何が正しいのか分からなくなった。結局、迷ったあげく「自分で初期仏教の修行を実践する以外、道は何も見つからない」と決心して、初期仏教のお釈迦さまの修行法を体験することになったのである。それは観法(ヴィパサナー瞑想法)と呼ばれる智恵の瞑想法であった。

仏教の事情を知るために、まずスリランカへ渡って沙弥(上座仏教の見習僧)となった。初期仏教は上座仏教とか根本仏教とも呼ばれている。上座仏教の国はタイ、スリランカ、ミャンマー、などが有名だが、日本の僧侶からは、日本とそれらの国とは仏教が違うからと言う言葉をよく聞く。侮蔑的な言葉では小乗仏教だからとも言われる。しかし、その教えや修行方法がどのようなものかを知る僧侶は少ないのだ。よく知らないならば、調べて見るべきだと思う。仏教はお釈迦さまの教えのはずだ。それならば、お釈迦さまの初期の教えに帰ってみることも悪くない。

多くの人々が毎日寺に集まる。比丘(僧侶)の法話を聞き、修行し、人生に困れば相談し、誕生日や結婚式には、食事供養のため、さらに大勢の僧を招く。子供たちのために日曜教室が開かれ、小さいときから僧や寺に親しんでいる。まるで昔の寺子屋のようだ。人々の生活の中にも、心の中にもいつでも仏教が身近にある。日本で想像していた小乗仏教とはえらい違いだった。「知らないということは恐ろしいことだな」とつくづく思ったものだ。

「お釈迦さまにもう一度戻ってみよう」と強く決心したのは、スリランカのこのような実体験からだった。

帰国後ミャンマーの長老へ電話をし、すぐにミャンマー行きを決めた。お釈迦さまの直伝の修行法と言われたヴィパサナー瞑想を修行するために。

ミャンマーには寺も道場もたくさんある。まずどの道場へ入るかは迷ったが、設備や英語の通訳の関係上、外国人が入れる瞑想道場はどうしても決まってしまう。

ヤンゴンで主に外国人向けの有名な道場は、

  1. インターナショナル瞑想センター
  2. ウ バキン瞑想センター
  3. マハシ瞑想センター
  4. チャンミ瞑想センター
  5. ウ パンディタ瞑想センター

などがある。瞑想道場とは別に寺院もたくさんあるが、そこで生活する僧侶も集中して修行するためには瞑想道場を利用する。

瞑想道場もそれぞれ特徴があり、きびしいところ、わりと自由なところなど様々あった。

まず@インターナショナル瞑想センターから紹介してみよう。ミャンマー政府が経営する外国人のための瞑想センターというだけあって、まったく自由な雰囲気が特徴。普通、瞑想センターは2日に一度は指導僧のインタビューがあり、自分の瞑想状態などをつぶさに報告し指導を受ける。このインタビューがなければ修行はなかなか先に進めない。

インターナショナル瞑想センターは希望しなければインタビューもないし、外出も自由である。当然、瞑想するもさぼるも自由。他の瞑想道場は一度入ってしまえば、外出は絶対出来ないと思わなければならない。買い物などがあっても道場の世話人に頼み買って貰うことになる。瞑想には外の刺激は禁物なのだ。インタビューも週3回あるので、部屋でさぼって寝ているという訳にはいかない。

インターナショナル瞑想センターは外出も瞑想も自由。だから、あまり本格的に修行する人もいないのではと思われる。外国人が宿舎代わりに使っているようだが、その代わり、ここだけは一日一ドルの費用がかかってしまう。ミャンマーの他の道場は外国人はすべて無料で修行できるシステムになっているのが一般的だ。なぜ瞑想者は無料なのかといえば、「瞑想する人々を支えることは仏陀に布施することに等しい」と言われるほどの信仰的な気持ちがミャンマーの人々にあるからだろう。そのためか多くの人々が修行者のために喜んで寄進するのだ。

インターナショナル瞑想センターは、瞑想修行を一度体験してみたい初心者には最適かもしれない。

Aウ バキン瞑想センターは日本大使館の近く。環境もよい高台の場所にある。日本でも知られているゴエンカ師が修行した道場としても有名である。ゴエンカ瞑想道場もヤンゴンにあるが、ゴエンカ方式を学ぶならやはり、ウ バキン瞑想センターで一度は試したい。但し、外国人修行者がほとんど訪れないためか、私が行ったときは英語の話せる指導者もいなかった。以前は個室も少なく、修行者は全員大きな部屋に寝泊りしていた。比丘も一人か二人ほどであった。在家の人々が経営する、地元の人のための瞑想道場という印象を受けた。

Bマハシ瞑想センターは私が最初に6ヶ月ほど比丘となって修行した道場でもある。ヤンゴン最大の瞑想センターであり、外国にも数多くの支部道場がある。外国人が多いセンターとしても知られていたが、現在は外国人瞑想者も少なくなってしまった。推測では瞑想時間を細かく管理するシステムが、自由を求める外国人には受け入れられにくいのではないかと思う。施設はシャワー付個室や外国人専用瞑想道場などもあり、ヤンゴンではもっとも充実している。

チャンミのモービーにいる日本人比丘尼

Cチャンミ瞑想センターは英語が堪能なチャンミ セヤドー(セヤドーとは大長老という意味)が直接指導するセンターである。セヤドーは毎年外国へいき、日本にもたびたび来日している。セヤドーの指導は外国人にも好評であり、直接英語で指導して頂けるためか、現在では世界各国から修行に来ている。そのためヤンゴン郊外へ外国人のための森林瞑想道場を建設した。

ヤンゴンでは英語の得意でない日本人のためには日本語の修行通訳もお願いできたし、セヤドーが菜食主義のためか、菜食の食事がおいしいことでも有名である。そのためか、ミャンマー人女性にも大変人気があるセンターで、瞑想修行者の約7割が女性であった。

前は個室もなく、大部屋にカーテンでし切られたベッドがあるだけだったが、現在はヤンゴン道場も改築され、個室も多く完備されているはずだ。(今年新しい宿舎が完成の予定)

チャンミ瞑想センターの指導の特徴は、道場での瞑想ばかりでなく、日常すべての動きや心の働きを24時間いつでも観察する方法である。私にはもっともお釈迦さまに近い修行形態ではないかと感じられた。

Dウ パンディタ瞑想センターは厳しさで有名なところ。徹底した英語の面接とレポートによって指導が行われ、さぼって寝ているようならばすぐに追い出されてしまいかねない。比丘となると毎朝托鉢に行くことも義務づけられている。他のセンターは比丘となっても托鉢は個人の自由であった。

ウ パンディタ長老は私の個人的見解になるが、その人格からは一番の瞑想者だと感じていた。道場は住宅地の静かな環境にあり、個室もあるが建物は古い。(最近新設した宿舎もできたようだ)当時はシャワーもなく水浴び場で身体を洗っていた。韓国人比丘やマレーシア人比丘尼(女性出家)が大変多かったのも印象的だった。

さぼっているような人など誰もいないし、食事のあとでも先を争って道場へ駆け込むような雰囲気がここにはある。集中力と厳しさを求めて修行するならウ パンディタ瞑想センターをぜひ勧めたい。

 ヴィパサナー瞑想法と言ってもこのように道場によって特徴が様々あるし、マハシ系統のチャンミやウ パンディタでも指導法に若干の違いがある。ウバキン瞑想センターは独自の瞑想法で大分違っていたが、効果的な興味ある方法でもあった。

ヤンゴンの瞑想道場の中で、最もベーシックで一般向きの道場と言えば、やはりマハシ瞑想道場かも知れない。常時500名ぐらいの修行者がいるし、比丘も50名はいる。女性修行者は300名、男性修行者が200名ぐらいの割合だろう。

創設者のマハシ長老はすでに亡くなっているが、マハシ道場は長老12名ほどの集団指導体制になっている。現在、東京の新宿にもマハシから一人の長老が派遣され滞在している。

瞑想方法は朝の4時から夜の9時まで一時間おきに座禅瞑想と歩行瞑想を繰り返すのが特徴で、面接指導が週に3回行われる。日本語通訳もお願いできる。

マハシの女性修行者食事中食事はミャンマー料理だが菜食もできるし、朝食のミャンマー名物のモヒンガーというそうめんは絶品であった。食事は戒律により朝の5時と11時の午前中2回だけである。

基本的には滞在費は無料であるが、外国人は最初に50ドル寄付するとトイレ、シャワー付の新しい個室が与えられ、外国人専用道場も併設している。

但し、各道場とも現在の施設が充実していると言っても日本のようには考えないほうが良いだろう。あくまで修行道場なので、個室があるという程度で、小さなベッドと机一つだけの2畳ほどの生活スペースと思ったほうがよい。

クティ私は最近ほとんどチャンミ瞑想センターのモービー修行道場へ行くことが多くなった。モービーはヤンゴンから車で約一時間。道場はモービー村のはずれの森にある。森の中にはクティと呼ばれる小屋が点在し、樹下で瞑想するもよし、道場でするもよし、さわやかな空気がなんとも心地良い。時間の管理はまったくなく自由に瞑想できるが、週3日はインタビューがあるのでさぼっているわけにはいかない。ここでは日本語の通訳がいないことが残念だが。ヤンゴンより5度ほど温度も低く夏もそれほど暑さでまいることもなかった。

ミャンマーは亜熱帯地方であるから、冬期(11月から2月)夏期(3月から5月)雨期(6月から10月)の三期に季節は分かれている。7月の終わりから10月の3ヶ月は雨安居になるためどこの道場も全国から多数の比丘が集まり満員になる。

また4月8日の一週間は仏暦の新年の水祭りになるので、日本の正月のように役所も会社もすべてが休みになる関係上、一般の人々がこのときばかりと比丘や比丘尼となる時期である。マハシなどは2000名ほどが瞑想していたし、モービーにも500名ほど来ていた。

8割は在家の女性であったが、皆が比丘尼となるため3日間は頭をそってもらうための長い行列が毎日できていた。ほとんどが20代の女性であったので、黒髪の山ができあがっていた。日本のかつらメーカーもこのときならばいくらでも髪が手に入るだろうなと私は不謹慎なことを考えていた。400名の女性比丘尼が一同に会した姿も一見に値するが、このときばかりは避けたほうが賢明であろう。猛烈に暑い季節でもあるので瞑想するのも大変だと思う。

修行として、ヴィパサナー瞑想をある程度進めるためには最低3ヶ月は必要と思われる。以前は観光ビザによってミャンマーへ入り、道場で修行ビザに切り替えて3ヶ月でも一年でも延長できたのだが、現在は4週間以上滞在する場合、日本で先に修行ビザを取得しなければならなくなった。その上、修行ビザ申請には招待状が必要である。面倒だが、あらかじめ希望する瞑想道場から手紙によって先に招待状を取り寄せなければならない。4週間なら観光ビザでも大丈夫なので、それで様子を見てから再度行かれるのも一考ではないか。

修行するために必要なものはすべてミャンマーのマーケットで揃うので、日本から持参しなくても済む。何でも本当に安い。公務員の給料が日本円にして5000円ほどなので、物価はともかく安い。一流ホテルにも40ドルで宿泊できるので、一日ぐらいはホテルに泊まり、買い物をしてから瞑想道場へ入るのが良いと思うが…。中華料理も私などは日本よりはるかにやすくて、そしておいしいと感じたほどだ。

瞑想に必要なものというのはあまりないものだが、それでもミャンマー事情を考え、最低限のものは用意しておきたい。女性も男性もミャンマーの人々はロンジーと言う長いスカートのようなものをはいて瞑想をしている。ロンジーはマーケットで売っているのでぜひ手に入れておきたい。普通には瞑想できる服と、洗面道具、バスタオル、ローソク、ライター、懐中電灯、洗濯洗剤、サンダル、傘ぐらいは用意したほうが良いのではないか。

ミャンマーで両替するには100ドル札が一番レートが良い。トラベラーズチェックは使用できないので注意。

最後に現在の日本人修行者の様子も伝えておきたい。

ミャンマーの道場へ行くと、近頃は必ず一人か二人の日本人に出会うようになってきた。それだけ日本でもヴィパサナー瞑想が知られてきたのかも知れない。

現在、私が知る限りではミャンマーに7名の日本人比丘がいる。そのうち、ヤンゴンの4名は「インターナショナル仏教大学」へ入学している。仏教大学は国営なので、比丘の学費、宿泊費、教科書代などすべてが無料になる特典がある。外国人のための仏教大学なので、試験に合格さえすれば男女年齢を問わず、誰でも入学できるのがうれしい。一学年は70名ほどで、半数は一般在家の人だった。一年コースと二年コースがある。朝の7時から夕方3時ごろまで様々な根本仏教の学科を学んでいた。入試は11月に実施され、合格発表は一月。入試科目は英語による仏教の筆記テストと面接であった。試験の内容は仏教に関する簡単なことで、あまり難しくないようだが、英語での筆記試験を重要視しているようだ。面接は中学生程度の日常英会話。授業はすべて英語で行われるが、半年ほどはまったく理解できなかったそうだ。

昨年の入学者の中に2年前、日本の会社を定年退職した人がいた。その人はまったく英語ができなかったが、一年間一生懸命勉強し、合格したと言っていた。定年後、お釈迦さまの直伝の仏教を勉強したくて、ミャンマーの仏教大学を目指したという。

今年は日本人男性が4名受験し、3名が合格できた。そのなかの一名は20代の臨済宗の僧侶だった。日本の若い僧侶が多く入学するようになれば、日本の仏教もまた違ったものになるかも知れない。

また一名は、ある宗教団体に長くいた方で、日本でヴィパサナー瞑想に出遭い、ミャンマーへ渡り、比丘となり半年ほどチャンミ瞑想センターで修行した後、今年入学した。悟るために真剣に道を求めていた努力が報われたようだ。

最後の一名はマハシ瞑想道場へ私が紹介した30代の方で、ミャンマーで比丘となって早、4年が過ぎた。日本ではレストランに勤めていたサラリーマンだったが、瞑想に魅せられ、悟りの道を求めてミャンマーへ渡ったのだ。ミャンマーで比丘となってから英語とミャンマー語を習得したようだ。一生比丘のままミャンマーで生きたいと、話していた。

近頃ミャンマー政府は仏教大学の窓口を一段と開放している。そのためか、中国や韓国やラオスなどからたくさんの僧侶が入学してきている。宿舎も教室も快適で、環境も素晴らしい。

修行中の比丘

いままで紹介してきた、瞑想道場も仏教大学も男女年齢を問わず、誰でも入ることができる。私は狭い日本の仏教界から世界へ飛び出して、皆さんに多くを体験して頂きたいと思っている。私のような50歳を過ぎた者にもできたのだから。

きっと新しい何かを発見し、あなたの人生は変わるはずだ。後悔しない生き方のために。


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