宗派を超えた・やさしいPC法話

 亡き人の呼びかけ

阿部 大 

私たちは、なくなられた人のことをよく、「仏さん」と言っています。では、仏さん とはどういう意味でなのか、考えてみたいと思います。

あるところに、主人を亡くされたご婦人がいました。その婦人が、いつもお参りに来 る僧侶に、こう申しました。

「私は今まで、お仏壇には全く関心がありませんでした。それが、主人が逝ってから 自然と、仏壇に足を運ぶようになりました。何か、主人がいつもそこにいるような気 がしてなりません。気がついたらいつも、自然に手を合わせています。」

僧侶が答えました。「それは、亡き人の呼びかけです。亡くなられたご主人が仏さん となって、あなたの前に現れてくれているのです。」

私たちは常に、亡くなられた人に対して、「供養」という言葉を用いています。供養 とは何か。それは、私たちにとって亡くなられた大切な人を想う、想いを馳せる、と いう事ではないでしょうか。例えば、亡き人が生前好きだった歌、好きだった花、 様々な思い出。どれでも良いのです。亡き人が生前好きだったものを通して亡き人を 想う。本当に大切な事であります。「供養」とは名の通り、お供えして養う。私たち の心を亡き人にお供えして、魂の平穏なる事を祈る。そういう意味ではないでしょう か。

テレビドラマのワンシーンにも、よくこういう場面があります。 「あの人は死んではいない。あの人は私たちの心の中でいつまでも、いつまでも行き 続けるんだ。」

一般的には、亡くなった人は成仏できずにさまよっている、と考えられている事が 多々あります。しかし、さまよっているのは本当は私たち一人一人の心ではないで しょうか。亡き人はどこにも彷徨っていない。成仏して「仏さん」になっている。こ ういう安心感が必要ではないでしょうか。私たちを目覚めさせてくれる働き、それが 「仏さん」の本当の意味であります。

「沈み行く夕日の彼方に仏の世界がある。亡き人よ、ありがとう。私たちも手を合わ せて彼の国へ生まれさせて下さい。」

こういう想いで、私たちは手を合わせることが大切ではないでしょうか。