蜘蛛の糸
チュウシュン
釈迦はある時、極楽の蓮池を通してはるか下の地獄を覗き見た。その中にカンダタという男の姿を見つけた。
カンダタは生前に様々な悪事を働いたが、一度だけ善行を成したことがあった。小さな
極楽から下がる蜘蛛の糸を見たカンダタは「この糸をつたって登れば、地獄から抜け出せるだろう。あわよくば極楽に行けるかもしれない」と考えた。そこで蜘蛛の糸につかまって、地獄から遠く離れた極楽目指して上へ上へと昇り始めた。
ところが糸をつたって昇る途中、ふと下を見下ろすと、数限りない地獄の罪人達が自分の後から昇ってきた。このままでは糸は重さに耐え切れず、切れてしまう。
それを恐れたカンダタは「この蜘蛛の糸は俺のものだ。下りろ、下りろ」と
それを見ていた釈迦は、カンダタの自分だけ地獄から抜け出そうとする
人の欲は計り知れないが、自分だけ良ければよいと考える人は、救いの手を差し伸べられても、その慈悲にすら気がつかず、また同じことを繰り返してしまう。
お釈迦様はカンダタのたった一つの救いである善行を見逃さずに、救いの手を差し伸べたが、カンダタはその慈悲にこたえることができなかったのである。
この話はカンダタだけではなく、私たちに人間の愚かさを教えてくれる。
合掌