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宗派を超えた・やさしいPC法話

ビジネス法話
「感謝の心を再認識する」

慧照 

人材育成は、いつの時代にも重視される経営課題です。中堅社員を対象に、組織とは、リーダーとは、などを学ぶために、教材として、小説「八甲田山死の彷徨」を使用したことがありました。新田次郎師のこの著書は、日露の開戦が予想される、時代は明治時代の末年。八甲田山を厳しい冬のさなかに雪中行軍の訓練を試みて、実戦に備えるという意図で行なわれました。二つの連隊の挙行が為されましたが、成功と失敗の、明暗分かれる史実が伝わっています。

悲劇だったのは、青森連隊の、210人中199人の死者という惨事となったことです。厳寒の雪山での状況判断を、隊長(大尉)は、地元の村人を案内人として使い、対応を考えたが、上官(少佐)に否定される。あまつさえ、リーダーであるべき大尉は行軍の命令を出せず、参謀役の少佐が命令を取り上げる。外部状況への対応の失敗、命令系統の無視・組織の乱れが、指摘されるものでした。

片や、弘前連隊。連隊長が各自に行軍中の課題を与え、それを遂行させることで求心力を保つ。雪中行軍の難所では、地元の村人を駆り出して、先頭に立て、必死に付き従って乗り切る。

研修では、参加者それぞれが雪山遭難の史実を通して、あるべき企業組織、リーダーシップのあり方を学びとったことと思います。

しかしながら、今でも感じることは、学ぶべきものの中に、何か欠けているものがあったのではないか、と思うのです。私は、参考教材として映画「八甲田山」の中に大事なものが描かれていたのを思い出します。

弘前連隊長が、雪中行軍の先導役を村の女に請う。先導する女は雪の中を舞うように進み、隊は後についていく。無事乗り越える。小説では、ここで、大尉が女に銀貨を投げて渡した、とあります。女が言う。「おらぁはいらねぇってことだねぇ」と。この箇所が、映像の世界では大いに異なります。花澤徳衛扮する舅が「兵隊さん、おらぁの嫁を死なせねえでくれぇ!」と、あの大きなギョロ目で哀願する。無事に難所を乗り越えた村は雪の晴れ間。そこで、銀貨を手渡す。受け取る。その時、高倉健扮する連隊長の徳島大尉は、「一同、きょうつけぇ!」と、号令を掛ける。何事かと振り向く、秋吉久美子扮するさわ女。「さわ女殿に敬礼!」。恥ずかしげに、うつむき、両手をポケットに入れて、帰途に着く。感動的な場面でしたね。

監督と脚本家が、この場面を創りあげたのです。私たちが学ぶべきものがここに表れていると受け止めます。八正道のひとつに、「正思(しょうし)」があります。人を欺かない。恨みで返さない。思いやる。そうです。相手に対する感謝の念が説かれているのです。