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幼な子の笑顔

阿弥陀堂栗桃庵 杉本好弘

嫁いでいた娘が、2番目の子を出産するというので我が家に帰ってきたときのことです。1歳半になる上の子の子守りをまかされ、ずっとその孫と一緒にすごしていました。男の子で車が大好きなので、毎朝、家の前の県道にでて、通る車をながめ、「バスだ」「トラックだ」などと喜んでいました。

ある朝、その県道の歩道の縁石にひとりのおばあさんがすわり込んでいました。「栗どろぼう」のおばあさんです。私の裏庭の栗が実るころになると必ずやってきて、ありったけ拾っていくのです。私や家族が見ていても注意してもやめる事はありません。ひどいときは、大きな枝ごと折り取ってもって行きます。栗にかぎらず、よその畑の野菜を取っていくので、まあ、近所の「鼻つまみ者」になっている人です。

そのおばあさんが、何か熱心に読んでいるのです。なんだろうと思ってチラッと見たら、どこかでひろったのでしょう、ファッション雑誌を眺めているのです。身なりにはまったくかまわない人なので、「へえ、ファッションにも関心はあるんだ!」と、ちょっとびっくりしました。そのとき、気配で、私のほうを振り返ったおばあさんと、私が抱いていた孫の目があったのです。孫はにこっと笑いました。すると、普段笑顔を見せたことのないそのおばあさんが、孫に笑い返したのです。かわいい孫に笑顔をかけてくれたおばあさんに、私もつられて、「おはようございます」と、それこそ始めて声をかけました。人の心とは面白いものです。こちらが笑顔を向ければ、あちらも、固い心がゆるんで、笑顔を返してくれる。そうすればこちらの心もゆるむ。幼い子供がそのきっかけを作ってくれたのです。

おばあさんの「栗どろぼう」は、それからも相変わらずなのですが、以前ほど不快には思わなくなりました。

蓮ライン