宗派を超えた・やさしいPC法話

死ぬことの意味
―死を前向きに見つめると―

日蓮宗僧侶 柘植正也(つげせいや) 

私が僧侶になる以前に読んだ本に、丸山敏雄さんの『万人幸福の栞(しおり)』という本があります(丸山氏は、社団法人 倫理研究所の創始者)。

この本の一節に「生れることが喜びであれば、死ぬることも亦よろこびをもって、これに向わねばならぬ」とあります。すごい境地ですね。そして、丸山さんは「死の超剋(ちょうこく)」の開花結実として、宗教があることを指摘しています。

私はそこまでの境地にはなれませんが、信仰をしているうちに思うようになったことがあります。それをお話させて頂きます。

私は元来、言葉で解るものではなく、信仰をやって行くうちに思うようになることと考えています。しかし、信仰生活をしていない方には、言葉に依らざるを得ません。

私は現在48歳です。平成21年は年男でした。今度年男が周って来る時は還暦なんですから、歳をとるのは早いですね。40歳になった時は嫌でした。私だけでなく、時折、そうおっしゃる方がいます。

青年海外協力隊の応募資格も39歳まで。若いと思っていたのに、どう考えても中年です。

人間が意識するのは、次に来る世代くらいではないでしょうか。児童の時は次に来る少年、少年の時は次に来る青年、青年の時は次に来る中年と。

そしていよいよ中年になると、次に来る老人を意識するようになります。若い時は、人間いづれ死ぬと理屈で解っていても、20代の前半などは、人は死んでも自分は死なないくらいの勢いで過ごしています。

老人になることが意識に入って来ると、死が訪れることが意識に入って来ます。病気になることを意識し、体力、容姿の衰えも感じて来ます。何某かの本に40代半ばから、身体は成長から老いる方向に変わると書いてありました。

私は45歳までレスリングをやっていました。練習を見学に来た友人から、「20代に勝つのを見て驚いた」と言われました。最近もベンチプレスで100kg持ち上げられるという青年に腕相撲で勝てました。そんな私でさえ、老いは感じるのです。40代半ばから、髪の毛だけでなく、眉毛に白髪が増えてきました。近くのものを見る時は、メガネを外すようになりました。若い時のような暗記力、記憶力の良さがなくなります。

自分達の親世代が、あちらの世に行くことが多くなりました。寂しい思いです。

身体的な変化だけではありません。若い時は、可能性に満ちています。しかし、中年になると生きて行くすべが限られて来ます。失業しようものなら、再就職は本当に至難です。若い時のような胸がキュンと締め付けられるような恋も少なくなります。

30代は、花の20代がお隣りさんで、つい昨日のことです。しかし、40代になると、花の20代との間に30代が入り、20代はもう昔のことです。キラキラ輝いて、希望と可能性に満ちていた青春時代が遠ざかります。

これから歳をとるほど、こうしたマイナス面は増大して行きます。若さ、青春時代の輝き、可能性を「あの頃は良かった」と慕い続けるだけでしょうか。

さて、ここで仏教に説かれる生命観を振り返りましょう。人が死ぬというのは、皆無になることではありません(皆無になるのでしたら、葬儀・法事をする必要はありません)。肉体は滅しても魂は存続します。その魂は、いずれまた別の肉体と一緒になって生まれ変わります。そう、輪廻転生です。

死が訪れるから、私達は、またあのキラキラ輝く青春時代を味わえるのです。

一回の人生で成し遂げられることには、限りがあります。生まれ変わって、目標を達成するための継続、再チャレンジができます。今飛んでいるジャンボジェット機だって、人類が一代で築いたものではありません。太古の昔からの夢を、人類が何代にも渡って引き継ぎ、努力した結果です。

つまり、気を付けて頂きたいのは、黙ってジッとしていて、良き来世が来るのではありません。今世を輝かせることが、より輝く来世へと繋がるのです。

業(ごう、カルマ)です。魂に蓄積されてゆくおこないです。悪因は悪果、善因は善果となります。因果応報といわれるものです。

私達は、こちらの世に魂を磨く修行に来ています。悪業を消し、善業を積む修行です。菩薩業といわれるものです。自分一人の損得、向上だけでなく、他を利する、社会、世の中に貢献するという行いです。

今、官僚の天下り、渡りが批判されています。国民の苦労の結集税金を、自分達が甘い汁を吸うために使う。これなどは、菩薩に反した姿勢の現れかも知れません。

輪廻転生は、私達の向上進歩の条件、方法として、生命体に与えられています。

良き人生を過ごせたことが、次のさらなる良き人生に繋がる、さらに良き生まれ変わりに繋がる。死という悲しみの中にも、次の幸せの始まりという喜びを見いだせるようになれたら、素晴らしいのでは。